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VILLA VISTA KOBE / 大阪湾を望む家

兵庫県神戸市

2024年4月

住宅

 神戸市北部の南向きに開けた標高500mの造成地に建つ、夫婦と子供二人が4人で住むための家である。


 敷地は昭和50年初頭に開発された造成住宅地の一角で、南に向かって急勾配で下る丘陵地形の上にある。周囲を見るとどの家も南側に高さ4mに近い石積み擁壁があり、東西の家とも高低差があるためそこからさらに基壇を設けて嵩上げをして、家は北側道路に近い位置に寄せる一方で南側には植栽豊かな庭をつくっている。区割りが比較的大きい割には、駅からそれほど離れていないためなのか、当時建てられた家には駐車スペースが無い家が多く、嵩上げをするのに造成時に出てきたのであろう巨大な岩を積み上げて基壇としている家がちらほらと見受けられた。また、もう一つの大きな特徴は、南側に遠くまで遮るものが無いため、遠くは大阪湾まで望める眺望が得られることと、海側から吹き上げてくる南風が吹く日が多いということである。


 このような敷地に現代住宅を設計するにあたり、どのような佇まいが良いのだろうかと思案した。結果として、嵩上げした基壇の上に立つ家という開拓された50年前からのあり方は継承しつつも、クライアントの要望や安全上の要求に合わせて基壇を削り取り、その上にこじんまりと家をつくることで周囲とのバッファーゾーンを残すことにした。まずは夫婦の2台の車を停めるために、道路側の基壇を大きく削り、駐車場の奥行きを確保した。自転車を置くスペースも必要だったので、解体した巨大な岩を駐車スペースを囲むように7つ並べ、道路と駐車スペース、駐輪場と駐車スペースを柔らかく仕切るようにした。次に崖側の基壇も安全上の理由で解体して狭め、クライアントの要望により南向きの陽当たりが良い家庭菜園とした。東西の敷地に対しても距離をつくることで風通しを良くするとともに、玄関へのアプローチや室外機置場などを配し、玄関の奥はクライアントが自ら石畳ガーデンをつくるためのスペースとした。こうして建築は南北から迫ってきた基壇と東西の余白に切り取られた矩形の範囲にこじんまりと建てることにした。


 その建築の中で一番に決めたのは、素晴らしい南向きの眺望を活かすために、2階に天井の高いLDKと南向きの大開口を設けることである。そこに至るまでの動線も念入りに検討し、パンチングメタルのフェンスで隣地と敷地奥に対して目隠しをしつつ基壇に上がるアプローチ、玄関に入りそこから階段を上がってリビングに出るときの開放感と高揚感を意識した。そしてその他の諸室については、寝室、書斎、洗面室、トイレ、浴室、ランドリールーム、ピアノ室、パントリーを、LDKとそこに至る動線を除いたエリアから陣地取りのように、あるいはパズルのように決めていった。一部、整形の平面形状のなかでどうしても納まりきらなかったランドリールームとピアノ室が、左右に突き出したボリュームとして外観上のアクセントとなっている。


 南向きに軒のある大きな開口を持つリビング・ダイニング・キッチンは、開け放しにできるテラスとも合わせて、まさしくこの家の生活の中心である。眺望が良く、明るいだけではなく、海風が通り抜けるように風通しが良く、夏は軒で日射を遮断して、冬は日射を取り込むように計画することで、できる限り空調や床暖房に頼らなくとも快適な家族の居場所ができるように考えた。現しにしている屋根の木架構は、垂木を90ミリ角の細い材とし、アーチ状に束と水平つなぎ材で補強することにより、棟木の無いシンプルな木組みとして表現した。水平つなぎ材は上下を互い違いにすることで、上側の材を目立たなくして軽やかさを強調する効果を狙っている。


建築・設備設計:IIDA SPACE DESIGN
構造設計:樅建築事務所
施工:建工101


写真:平井広行

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